「バーリマン様、納品されました魔道ボイラーの確認をお願いします」
「ええ、解ったわ」
職人のおじさんたちが井戸からお風呂までお水を引いてくるのを作ってるとこを見てたらね、ロルフさんちのメイドさんがバーリマンさんに魔道ボイラーをお風呂に付けたから見てって言ってきたんだよね。
でね、おじさんに聞いたらお水が出てくるようになるまでにはもうちょっとかかるって言ったもんだから、僕はバーリマンさんについてって魔道ボイラーを見せてもらう事にしたんだ。
「こちらでございます」
「あら、魔道リキッドのタンクは館の外壁についているのね」
バーリマンさんがこんな風にメイドさんとお話してる間にね、僕はどんな魔道ボイラーがついてるのかなぁって見てみたんだよ。
そしたらさ、そこには僕が知ってるのとは違う魔道ボイラーがついてたんだ。
「ねぇ、バーリマンさん。この魔道ボイラー、変だよ」
「あら、ルディーン君。何かおかしい所があったのかしら?」
「あのね。この魔道ボイラー、お水を入れるとこが無いんだ」
そう、この魔道ボイラーには温めるお水を入れるとこがついてなかったんだよね。
僕の住んでるグランリルの村にはね、みんなで入れるおっきなお風呂場があるんだ。
そのお風呂もおっきな魔道ボイラーでお湯を沸かしてるんだけど、そのボイラーは川から水車でくみ上げたお水を中に入れて、それをあっついお湯にするんだよ。
でね、そのあっついお湯にお水を混ぜてちょうどよくなったのがお風呂の中にずっと流れてくるようになってるもんだから、みんなが入ってもお風呂のお湯がなくなったりしないんだよね。
僕、魔道ボイラーってそれしか知らないでしょ?
だからこのお家のお風呂にも魔道ボイラーつけるって聞いて、そう言うのがつくんだろうなぁって思ってたんだよ。
なのにこの魔道ボイラーには、あっついお湯にするお水を入れるとこが無いんだもん。
だからびっくりして、バーリマンさんにお水を入れるとこが無いよって言ったんだ。
でもね、それを聞いたバーリマンさんは、何の事? って頭をこてんって倒したんだよね。
「お水を入れるところがないって、お風呂へ入れるための作業をしているところを先ほどまで見ていたでしょう?」
「違うよ! お風呂じゃなくって、魔道ボイラーにお水を入れるとこがないの」
「えっ? 魔道ボイラーにお水を入れるの?」
「そうだよ。だってお水を入れないと、お湯にならないじゃないか!」
僕はね、バーリマンさんに村のある魔道ボイラーの事を教えてあげたんだ。
だって、それを教えてあげたらきっとバーリマンさんだって、お水を入れるとこが無いのを変だって思うはずだもん。
でもね、何でこの魔道ボイラーにお水を入れるとこが無いのか、全然違うとこから答えが返ってきたんだよね。
「おお、そう言えばグランリルの風呂のボイラーは、かけ流し型であったのぉ」
「かけ流し型、でございますか? ハンバー司教」
「うむ。グランリルの村の風呂場は川に隣接して建てられておってな、水が潤沢に使えるものだからその方が便利なのだ」
答えを教えてくれたのは、お爺さん司祭様。
司祭様が言うにはね、この魔道ボイラーが変なんじゃなくって、ほんとはうちの村のお風呂場についてる方が他のとちょっと違うんだってさ。
「グランリルの浴場は村の者たちすべてが使う共同のものでな、それ故に消費される湯もかなりの量になってのぉ。ゆえに水が豊富に使える川の横に浴場を建て、その水を常に沸かし続けて湯船に流しいれると言う特殊な魔道ボイラーを使っておるのだ」
「なるほど。多くの者たちが使うのであれば、湯が減るたびに水を足して沸かし直していては効率が悪いですものね」
僕、お風呂って村のお風呂場か、若葉の風亭のお風呂にしか入った事ないんだよね。
そのどっちもが、ずっとお湯がお風呂に流れ込んでくるようになってたもんだからそれが当たり前だって思ってたんだけど……。
「そっか。あんまり人が入らないお風呂だったら、ずっとお湯を入れてなくってもいいのか」
「うむ。個人の館でその様な事をしては、魔道リキッドの無駄遣いと言えるであろうな」
魔道ボイラーでお湯を沸かし続けるって事は、その間ずっと魔道リキッドを使い続けるって事だもん。
グランリルのお風呂と違って、このお家じゃそんなにいっぱい入る人はいないでしょ?
だからうちの村で使ってるような魔道ボイラーは、このお家のお風呂に付けない方がいいんだってさ。
「それにね、ここでは井戸からお水を汲み上げるのにも魔道リキッドを使うもの。そんな贅沢な使い方は、ちょっと考えられないわね」
「うむ。だからこのような館では、風呂に張った水を沸かすタイプの魔道ボイラーを使うのが一般的なのだ」
このお風呂はね、中にお水を入れるとつけてある魔道ボイラーの中にそのお水が入ってくようになってるんだって。
だから魔道ボイラーのスイッチを入れると、中に入ってお水が温められてお風呂が沸くんだってさ。
「このような魔道ボイラーを使えば魔道リキッドの使用量もかなり少なくて済むであろう?」
「それにこのタイプなら、館の主人や家族が入った後でも、改めて魔道ボイラーを動かす事で使用人が覚めてしまったお湯を使わなくてもよくなるという利点もあるのよ」
「そっか。寒い時は、メイドさんたちもあったかいお風呂に入りたいもんね」
バーリマンさんの言う通り、お風呂の中のお水を沸かす魔道ボイラーの方が、こういうお家で使うのにはいいのかも?
「メイドたちもそうですけど、ルディーン君が引き取った子たちもこれからはお風呂に入るようになるでしょうからね」
「うむ。魔道リキッドの消費を気にすることなく風呂に入れるこのボイラーの方が、この館には合っておるであろうな」
そう言えばニコラさんたち、宿屋さんでご飯食べてた時も、さっき服を買おうって時も僕のお金をあんまり使っちゃダメって言ってたもんね。
僕はこのへんてこな魔道ボイラーを見ながら、お金がいっぱいかかる村の魔道ボイラーよりこっちの方が絶対いいよねって思ったんだ。
皆さんの家のお風呂って、給湯式ですか? それともガス窯で炊くタイプ?
うちはガス窯で炊くタイプなんですが、今は給湯式の方が多いでしょうね。私自身、親せきの家や出張先の工場のお風呂は給湯式ばかりですし。
因みにこの話は、うちに泊まりに来た姪っ子から、今住んでいる部屋のお風呂は追い炊きができないから不便と言われて思いついた話だったりします。
ただ、それだけだと話が広がらないから温泉でよくあるかけ流しも加えてみましたw
実際問題、家庭の風呂でかけ流しなんて無理ですよね。お金かかりすぎるし。
さて、コロナが収束に向かっているからか、またも今週末、急な出張になってしまいました。
本当なら再来週あたりの平日に行くはずだったのに、お客さんの方からどうしてもと言う電話がありまして……。
と言う訳で、すみませんが今回も月曜日の更新はお休みさせていただき、次回更新は来週の金曜日になります。
度々の休載ですが、このような事情ですのでご容赦ください。